2010年1月18日月曜日

今夜はおしまい

浅川マキが死んだ。
帰っていったんだろう。
「もう・・・店じまい」とばかりにね。

ベランダに出る。
深夜に身を置き、あらためて浅川マキを想う。

ぼくにとって浅川マキは夜の象徴であっただろう。
そして、夜はいっとう死に近い世界だろう。

思えば「死」のにおいがぷんぷんしてくる歌い手だった。
「死」の側から「生」に向けて唄っていたと思う。

オフィシャルサイトを何度も何度も見返したのはなぜだろう。
その死が信じられないからではない。まったく、ない。
いま「死」なの?と。
もう、「死」だったじゃないの、と。
そんな、いまさら感。

その意味で、死してなお同じ存在であるのだ。
むしろ「死」によって浅川マキという存在は完成したのかもしれない。
もちろん、新しい曲、新しい唄い方をもう得ることができないという欠落感はある。とてもある。

ご本人がどう考えていたのかは知らない。
演じていたのかもしれない。
「浅川マキ」という存在になろうとしていたのかもしれない。
でも、思うがままに生きて、思うがままに唄うことが、そんなマキさんの存在自体が、作品になるような人だったろうとは感じてる。

黒ずくめで長い髪の間からちいさく顔が浮かび上がっている。
厚ぼったい唇はざらざらとなにやら呪文をつぶやき、唄う。
初めてレコードを聴いたとき、ジャケットを見たとき、「魔女?」と思ったなあ。

ぼくにとっては夜と死を体現する、いわば「冥界のDiva」だった。

どのレコードだったか忘れたが、ライナーノーツに「浅川マキを聴くと元気が出る」というようなことを誰かが書いていた。
それは、そう。

どんな深刻なことでも、深い悩みでも、「死」の側から見たらたいしことじゃありゃしない。
滑稽なことなのよ、と。
どこか笑い飛ばしていた。
愉しいじゃない、悩みだってさ、と。
どこか投げやりで、気楽でもあった。
だから元気になれた。

今夜は何を聴こうかと考えた。
「浅川マキの世界」にしたいところったけど、これはレコード。ちと厄介。
テープにコピーはしているけど。
しばし考えて結局「DARKNESS I」にした。
ああ・・・浅川マキだ。
古い時間が流れてきた。

いちばん好きなアルバムはどれだろう?
選べるもんじゃないけれど「灯ともし頃」ってけっこう好きだなあ。
まず「灯ともし頃」という言葉が良かった。




もう、店じまい、なのですね?
最後は香水をつけていましたか?
わりといい街でしたか?




闇のなかに置き去りにして~BLACKにGOOD LUCK
Amazon bookmark with Amab.jp on 10.01.18
浅川マキ
EMIミュージック・ジャパン (1998-11-26)
おすすめ度の平均: 5.0
5 鳥肌が立ちっぱなしになる、凄まじい1作


このCDが生前最後のアルバムとなったようです。
手に入れなくては。



探したら動画データがありました。
ぼくの好きな「それはスポットライトではない」がありました。
バックはたしか、つのだひろさんでした。



他にもあるようですね。

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